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同年7月の中間評価では、4月時点のシナリオから現実の景気動向が下振れしていることを認めた上で、特に、原油など原材料高からくる海外への所得流出が景気をさらに押し下げるリスクについて、警戒感を示した。
さらに2008年7月の展望レポートでは、世界的な金融危機と景気悪化への警戒を強めた上で、0.2%という小幅の利下げが日銀によって実施され、政策金利である無担保コール翌日物の金利誘導水準は年0.3%になった。
円高・株安の急進行が日銀を利下げに追い込んだ主因の一つだが、日銀が0.2%利下げしても、米国やユーロ圏が0.5%ないしそれ以上の幅で追加利下げに動けば、内外の金利差は縮小し、為替の円高要因になってしまう。
オーストラリアのように1%、英国のように1.5%といった大きな幅で急ピッチに利下げしている国もある。
為替対策としての日銀の利下げの効果は、物理的な下げ幅の小ささゆえに、そもそも限定的なのである。
逆に、日銀が利上げに転じることができる時期は、景気悪化が著しい中で、おそらく2010年7月以降にずれ込むものと見られる。
そこまで先の話になると、為替相場が織り込む材料にはなってこない。
日本の経済対策にはなぜ効果がないのか。
さらに、為替相場が日本側の材料によって動きにくい第一の理由は、「日本の政治情勢が中途半端なままである」というものだ。
衆院の3分の2以上を自民・公明両党が握る一方、参院は民主党が第一党という「ねじれ国会」が長期化しており、自民・民主で大連立を模索する動きは頓挫した。
世界的な金融危機による緊張増大で、2008年秋以降、解散総選挙は先送りされてきた。
日銀総裁選びは混迷し、日銀副総裁の空席は18年3月にようやく埋まったものの、審議委員1名については空席が長期化するなど、国政の停滞も目につく。
そうした政治情勢とも関連して、海外投資家の注目度が高い日本の改革路線の先行きが、ぼやけたままになっている。
福田康夫首相(当時)が2008年春に決断した道路特定財源の一般財源化は、確かに画期的な出来事である。
しかし、09年度予算編成の内容次第で骨抜きになってしまう危険性がある上に、当の福田首相が9月1日、政府予算案がまとまる3ヵ月以上も前のタイミングで突然辞意を表明し、政権を投げ出してしまった。
その後、与党側からは、高齢者医療費負担の軽減措置など、明らかに選挙をにらんだと思われるバラマキ的な動きが強まっている。
この間、世界的に景気が悪化し、企業業績が減益に転じていることから、税収は当初の見積もりよりも大きく下振れている。
財政事情は、景気動向という面から一段と厳しくなっているわけである。
「構造改革優先」を唱える論者からすれば、本来は財政健全化目標を維持するための歳出絞り込みの徹底が必要な場面なのだが、総選挙が近いことから、そうした動きに政治的な求心力は乏しい。
その流れの中で、2008年8月19日、政府・与党は総合経済対策を決定。
また、川月加日には、2兆円規模の定額給付金や高速道路料金引き下げを柱とする追加の経済対策が決定した。
これらの経済対策をどのように評価するか。
見方はさまざまだが、1後退局面に陥った景気を刺激する、2規制緩和推進や赤字国債増発抑制など構造改革の基本路線は維持する、3解散総選挙もあり得る中で政治的なアピールを強化する、という3つの狙いが混在してしまったため、何を強く打ち出したいのかが不明確で、一種の「焦点ボケ」ではないかと筆者は受け止めている。
経済対策とは、「緊急に必要が生じた時に決められる、短期的な景気刺激を狙った施策のパッケージ」というのが、よい悪いは別にして、本来の姿だ。
したがって、財源の手当てが必要な場合、当初予算でなく、年度途中に補正予算で行われることが多い。
一方、経済の構造改革については、中期的な方針として毎年1月に「日本経済の進路と戦略」が、6月にはその年の「経済財政改革の基本方針」(いわゆる「骨太の方針」)が、それぞれ閣議決定される。
しかし、「構造改革」という考え方は、「経済対策」というコンセプトとは本来かみ合わないはずである(例外は事前にまったく予測できなかったほど突発的な経済状況の変化があって、「骨太の方針」にはない対策を打ち出す必要が生じた場合や、「骨太の方針」に書かれているものを緊急に前倒しで実施する必要が生じた場合など)。
例えば、規制緩和を促すといった措置は、競争激化を通じて倒産・失業を増加させるため、短期的にはむしろ景気に悪影響を及ぼすことが少なくない(第5章参照)。
したがって、経済対策に規制緩和を盛り込むのは、本来はおかしな話になる。
結局、焦点がはっきりしない経済対策が打ち出されたのは、総選挙があり得る時間帯であることが強く意識され、与党側が、政治的にアピールできる「目玉」の施策を欲したせいだろう。
しかし仮に、過度にバラマキ的だと評される経済対策になってしまうと、「日本は構造改革路線を捨てた」とみなした海外投資家が、日本株に対して中長期的な失望感を抱いてしまう恐れがある。
また、日本国債の格付けを米格付け会社が引き上げてきている流れに水を差すことにもなりかねない。
経済対策がどのくらい有効かは、日本の景気悪化が「外」の要因による部分が大きいことを考えれば、おのずと明らかだろう。
世界経済が、国によって程度の差はあれ悪化していったきっかけは、米国の住宅バブル崩壊と、それに連鎖して世界的に発生した信用バブル崩壊である。
また、日本経済の回復時期は、米国経済の回復時期にかなりの程度依存する(日本経済の「米国依存」については第3章参照)。
だから、日本の政策によって、後退している経済の局面転換を図ろうとする考え方には、そもそも無理があるのだ。
以上のように考えてみると、日本の材料がドル/円相場に影響力を持ちにくい状態は、どうやら今後もしばらく続きそうである。
東京市場の1月最初の営業日の寄り付き水準と、1月最後の営業日の終値水準とを比べて、1月中のドル/円相場のベクトル(円高ドル安か、円安ドル高か)を、まず調べる。
次に、1月最初の営業日の寄り付き水準と、旧月最後の営業日の終値水準とを比べて、年間のドル/円相場のベクトルを調べる。
このとき、両者が一致する確率が24・4%であるというのが、「1月効果説」である。
変動相場制に移行したのが1973年の途中からなので、科年から2007年まで別年間のデータを調べることができるのだが、この「1月効果説」という経験則の的中の度合いは「師勝7敗」となっている。
要するに、ドル/円相場については、1月を起点にして吃月のクリスマス休暇前に取引を終える、いわゆるカレンダーベースで取引を行っている米国のファンド勢の影響力が大きいということである。
言い換えると、4月スタートの年度ベースで取引を行う日本の機関投資家の影響力は小さい(各年のデータなど詳しいことに興味がある方は、拙著「チーズの値段から未来が見える」S社をご参照いただきたい)。
「1月効果説」が示す外国人の影響力そのドル/円相場については、外国人投資家の影響力がいかに強いかを示唆する、有名な経験則がある。
外銀の中には、アジアの拠点を東京からシンガポールに移しているところもある。
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